HINDUSTANI TRANSCRIPTION in THIS SITE
                                              ⇒Wikipedia

ヒンディー語でもウルドゥー語でも本質は変わりない。両者ともサンスクリットの末裔ではあるのだが、
前者が語彙的にイスラームの影響を極力排除しサンスクリットへ回帰する傾向が顕著であるのに対し、
後者はその反対であり尚且つペルシャ風のアラビア文字を使用する、という姿勢においてのみ異なる
のである。即ちそれらはヒンドゥスターニー語のインド国内またはパキスタン国内における顕れ、という
ことになる。


ヒンディー語の表記はデーヴァナーガリー文字で行われており、概ね「サンスクリットの転写法」に準拠
すればよいので、ここではそれとの差異についてのみ述べる。

まず現代では二重母音の発音は劣化している。

 「ai 」→【アーとエーの中間音】または【広口のエー】 一部単語では【アィ】のまま
     (【アェ】っぽい方言もある)
 「au」→【広口のオー】 一部単語では【アゥ】のまま
     (【アォ】っぽい方言もある)

なお、母音の長短は時として恣意的に発せられるようである。そして「sレ」字は反り舌音でなくなった。

 「sレ 」→欧米の暗い「シャ行」、「s#」字の音

しかし無用の混乱を避けるため、サンスクリットと同様の転写記号を保つこととする。
なお、語末の「y」「w゛」は実際には【エ】【オ】っぽく聞こえ、語中の半母音「y」「w゛」「r」「l 」の直前の
子音は促音で発せられる傾向があるようである。


母音の鼻音化(サンスクリットのアヌスヴァーラに相当)には「月のビンドゥ」記号を使う。

 nasalization=「¥」(月のビンドゥ、チャンドゥル・ビンドゥ)

実は母音記号との兼ね合いでこれが邪魔な場合は次の「ビンドゥ」記号に形が変化するが、転写記号
自体は変わらないものとする。「ビンドゥ」記号の通常の使用途は鼻音の代用である。
現代では「ng 」「n# 」「nレ 」「n」「m」は異音、即ち1つの実体が周囲の音の影響で異なる顕れ
をしたものと見なされ、これを全て1つの記号で代用し得る(更にこれを省略することもできる)。

 nasal C=「m」(ビンドゥ) 「¥」の代用ならば「¥」で記す

サンスクリットにおける「¥」と「m」の用法が反転しているが、混乱を避けるため元の記号は継承して
転写する。なお、語末の「-a ̄¥w゛」は【アーオン】と読まれる(ウルドゥー語でも昔はこのように綴って
いたらしいが、現在はほぼ音の通りに記す)。

サンスクリットにない子音は次のようにドット付文字として新造された。
 qa=「咽頭化による強勢のカ行」=「k‘(a)」と転写することとする
 χa=「摩擦のカ行、独語の強いハ行」=「χ(a)」と転写する
 γa=「摩擦のガ行」=「γ(a)」と転写する
 za=「z(a)」 fa=「f(a)」 zha=「ジャ行」=「z#(a)」と転写する
 rレa=「反り舌の r 」=「rレ(a)」と転写する(なお、元の「r」字→「日本のラ行」)
 rレha=「気息を伴う↑音」=「rレh(a)」と転写する

にも関わらず現実には点無しで記してしまう場合もしばしばである。
なお、現代では無母音記号(「ハル」記号)は使わずとも、語末の子音字の内部母音は読まぬことに
なっている。そして語中で何らの記号も付いていない子音字については、その前後の子音字の内部
母音が読まれぬならば、件の子音字の内部母音は読まれることになっており、前後の子音字に母音
が付されている(内部母音とは限らない)ことが確定しているなら、その子音字には内部母音が無い
ものと見なす。以上を後ろから調べていき、最後に語頭の子音字に何らの記号も付いていないならば、
その内部母音は読まれる。よって内部母音はほぼ連続して生じないことになるが、当サイトでは語末
以外で無母音記号が無いのに読まない内部母音には次の記号を付すことにする。

 読まない内部母音(語末以外)→「a。 」と記す

しかし実際には無母音記号(或いは合字)を使った綴りも見受けられるようである。
なお、何の記号も付いていない「h」字の前の潜在母音「a」(つまり「 aha」または「 aha。 」の形)
は【広口のエ 】音に変調し、「hu」は【ホ】っぽい音になる。


次にウルドゥー語の転写規則に移るが、「アラビア語の転写法 」との差異についてのみ述べること
とする。ただしイラン経由でイスラームが入ってきたので「ペルシャ語の転写法 」と多少話がダブる。
まず、喉に関する音などは劣化している。

 アラビア「’」字  → 単なる母音の置台 「y†’」等の形で母音連続を避けるために使う
 アラビア「‘」字  → 借用語にのみ現れ、↑同様に母音の置台または母音連続を避ける区切りとして
  扱うが、そのように解釈できない時は 「a‘」〜【アー】 「i‘」〜【エー】 「u‘」〜【オー】 と変音する
 アラビア「h‘ 」字 → 【h】で読む
 アラビア「t‘ 」字 → 【t】で読む
 アラビア「d‘ 」字 → 【z】で読む
 アラビア「s‘ 」字 → 【s】で読む
 アラビア「z‘ 」字 → 【z】で読む

 アラビア「th 」字 → 単なる【s】音で読まれる
 アラビア「dh 」字 → 単なる【z】音で読まれる

しかし余計な混同を防ぐために転写記号自体は保持するものとする。字体の異なる場合もあるが、
やはり記号は変えない。
 アラビア「k」字→k persian(独立形・語尾形のみ異なる)
 アラビア「y」字→y persian(単独、語尾でのみ点が無い)

従って語尾では「y† 」と間違えぬように注意を要する。無い文字は作ればよいが、一部は既に
ペルシャ人が作ってある。
 p=「p」 g=「g」 c=「t# 」 zh=「z#

「w゛」音もないが、アラビアの「w」字は「w゛」音にも転用されるので臨機応変に表記する。

 アラビア「w」字→「w」または「w゛」で臨機応変に転写する
           (ペルシャ語起源の読まない「w゛」字は「w゛。 」とする)

インド独特の反り舌音は小さな「t‘ 」字を付して作り出された。
 tレ/古形tレ old=「tレ 」 dレ/古形dレ old=「dレ 」 rレ/古形rレ old=「rレ

なお現代では、「sレ 」字は「シャ行」そのものになっているので独立の文字は定義されない。また、
上の方で言った通り「nレ 」「n# 」「ng 」は「n」として扱ってよいのでそれも無い。
気息を伴う音については、下の記号を付す事によって得られる。
 aspiration=「帯気音化」(ニ眼の h 、ドー・カシュミー・ヘー)=「 h 」で転写

これはアラビア文字の「h」に似ているが、常に「2つの目」を持つ。フォントによっては、これは渦巻き状
の奇妙な形になってしまうので注意する。
しかしこれではアラビア文字の摩擦音と競合してしまうので、それらは以下のように記号を変える。

 アラビア「kh 」字→「χ」  アラビア「gh 」字→「γ」
 アラビア「th 」字→「θ」  アラビア「dh 」字→「δ」

なお、「二眼の h 」に対して普通の「h」字(小さい h 、チョーティー・ヘー)の方は、単語内では全く「目」
を持たない。
 h end(語末)/h middle(語中)/h initial(語頭)=「h」

次に「¥」や「m」は「n」字で代用されるが、これは語末では点無しになる。
 n/(語末)nasalization=単なる「n」または「¥」「m」(ヌーネ・グンナー)

母音に関してもアラビア語同様に扱える。ただしデーヴァナーガリーの「ai 」「au」字に相当するものは
実際の発音は変わっているものの、アラビア文字でも字面の通りに書かれる。

 デーヴァナーガリー「ai 」字〜アラビア「ay」字
 デーヴァナーガリー「au」字〜アラビア「aw」字

問題は「e ̄」「o ̄」音である。それらの母音記号はアラビア文字に無いので単に「y」「w」字を書いて
そのように読ませることになっているが、不便なので当サイトでは便宜上次のようにする。

 梵「e ̄」相当のアラビア「y」字→「ey」と転写するものとする
 梵「o ̄」相当のアラビア「w」字→「ow」と転写するものとする

ここで便宜上「e」「o」なる記号を導入したが、決して単独では使わない。なお「ay」「ey」用法での「y」字
は語尾では次の特別の形を取ることになっている。
 y big (接続形はy big end)=(大きい y 、バリー・イェー)

しかしわざわざ転写記号を変更する必要もない。そして「y†’ow」は「w†’」字で記されることも多いが、
分かり易さのために記号を変える。

 「y†’ow」用途の「w†’」字→「†’ow 」と記号を変える

なお、「ey」も「ow」も実際には短い音になることも少なくない。
語末の「ah」は【アー】音で読まれる場合があり、時にはこれは「a┃」で記されることもあるが、これは
特別な記号で記すことにする。

 【アー】で読む語末の「ah」→「ah†」と転写

或いはペルシャ語では語末の【ア】は「ah」と綴られる決まりなので、そこからの借用語でも同様の読み
が生じるから、転写記号も臨機応変に変える。

 【ア】で読む語末の「ah」→「ah。 」と転写

ヒンディー語の変調する「ah」「hu」に対応してウルドゥー語の単語もそのような変化を被るが、その他に
【h】音の前の「i 」「u」も音色が変化することがある。

 「i 」+「h / h‘ 」〜【狭口のエ+h】
 「u」+「h / h‘ 」〜【広口のオ+h】

ペルシャ語由来の語でエザーフェが使われている場合でもペルシャ語の転写法に準拠して「-i 」
(やはり【エ】と読む)と記すことにする。これは明記される場合もあり、通常「i 」扱いで記されるが、
「┃」や「w」に付いたエザーフェを明示する時には「大きい y 」字で記すことになっており、「h」語末
の後ろでも「’」字で書く決まりがあるが、当サイトでは特に転写記号を変えることはしない。
ヒンディー語でエザーフェを書記する場合は「e ̄」字で書かれるが、やはり「-i 」のままにしておく。



付録 転写と発音の例
 matlab @Hindi=「mata。 lab」 mat‘lab @Urdu=「mat‘ lab」
                          =【マトゥラブ】=問い掛け、請願、意図、意味
 ヒンディー語で無母音記号が無い場合の潜在母音の取り扱い。
 語末の「b」には何の記号も付いていないが、無条件に潜在母音は読まぬこととされる。そして
 母音無し「b」字の前にある記号無し「l 」字では潜在母音を読む。母音有り「l 」字の前の記号無し
 「t」字は潜在母音を読まないが、語頭は記号無しでも潜在母音は読む決まり。
 ウルドゥー語では補助記号が付される場合でも無母音記号だけはあまり使われないようである
 が、絶対に付けていけないというものでもない。
 なお、この語はペルシャ経由で伝わったアラビア語「mat‘ lab」に由来するが、ウルドゥー語の
 「t‘ 」字は【t】音で読み、デーヴァナーガリーでも対応字は用意されておらず「t」字を使う。
 gaN.gaa @Hindi=「gamga ̄」 gaN.gaa @Urdu=「gamga┃」      =【ガンガー】=ガンジス川
 アヌスヴァーラ記号「m」は子音としての鼻音の代用として使われるが、適当に【ン】とでも読んで
 おけばOKかと思われる。ウルドゥー語でも単なる「n」字で記されている。
 uuM.t. @Hindi=「u ̄¥tレ 」   uuM.t. @Urdu=「┃uw¥tレ 」    =【ウーントゥ】=雄ラクダ
 チャンドゥル・ビンドゥー記号「¥」は母音の鼻音化を表すが、ウルドゥー語では単なる「n」字に
 なり、やはり【ン】などで適当に読んでおけばよい。ウルドゥー文字の反り舌音は上に小さな「t‘
 を乗せた文字で表される。また、この語は固有語なのでウルドゥー語の単独の【ウ】は「’」を使わず
 に直接「┃」に「u」記号を付けてよい。
 maiM. @Hindi=「mai¥」       mayM. @Urdu=「may¥」     =【マェン】=一人称単数代名詞
 「¥」を乗せるスペースが無いのでビンドゥ記号を使っているが、そのまま「¥」で転写する。
 そしてウルドゥー語で「¥」や「m」を表す「n」字は語末では点が付かない。
 「ai」「ay」は【アとエの中間音】または【広口のエ】であるのだが、方言まで加味するならば
 【アェ】とでもしておくのが無難かもしれない。
 shauqiin @Hindi=「s#auk‘i ̄n」   shawqiyn @Urdu=「s#awk‘iyn」
                   =【シャォキーン】=熱望している(人)、愛好している(人)
 「au」「aw」も【アォ】辺りにしておくのが無難かもしれない。「k‘ 」字があるのでこれはペルシャ
 から入ってきたアラビア語に由来し、インドに元からあった音ではないが、デーヴァナーガリー
 にもドット付き文字として新設された。しかしこの種のドットはしばしば省略されるようである。
 hai @Hindi=「hai」  hay @Urdu=「hay」 =【ハェ】=be動詞の2人称単数または3人称複数現在形
 ウルドゥー語の語末の「ay」は「a」+「大きい y 」で表される(一方「iy」では普通の「y」字形
 のままである)。また、ウルドゥー文字の「h」は接続形では全く「眼」を持たぬことにも注意。
 teeree @Hindi=「te ̄re ̄」     teyrey @Urdu=「teyrey」   =【テーレー】=あなたの
 アラビア文字に「e」記号が無いので、ウルドゥー語の「e ̄」は何の記号も付いていない「y」字
 で表されるが、語末でそれは「大きい y 」字の形を採る。
 boonaa @Hindi=「bo ̄na ̄」  bownaa @Urdu=「bowna┃」    =【ボーナー】=種を播く
 アラビア文字に「o」記号は無いのでウルドゥー語の「o ̄」は何の記号も付いていない「w」字
 で表される。
 caay @Hindi=「t#a ̄y」    caa’ey @Urdu=「t#a┃y†’ey」   =【チャーェ】=茶
 ヒンディー語の語末の「y」字は【エ】っぽくなるが、ウルドゥー語ではほぼ音の通りに記されて
 いる(ウルドゥー語の「ey」はここでは短い【エ】で読むが、ヒンディー語でもウルドゥー語でも
 母音の長短は単語によっては勝手に決められていることも少なくない)。
 また、ウルドゥー語で母音連続を避けるために「y†’ 」が使われているが、これは省略されて
 綴られることもあるようである。
 naav @Hindi=「na ̄w゛」     naow @Urdu=「na┃†’ow」     =【ナーォ】=(小)舟
 ヒンディー語の語末の「w゛」字は【オ】っぽくなるが、ウルドゥー語ではほぼ音の通りに記される。
 ウルドゥー語の「y†’ 」+「ow」は「w†’†’ow)」字で記されることが多いが、「y†’ 」は省略
 されることもあるので、単なる「w」字となる綴りもある。
 gaaM.v @Hindi=「ga ̄¥w゛」   gaaown @Urdu=「ga┃†’own」  =【ガーオン】=村
 ヒンディー語の「a ̄¥w゛」は【アーオン】で読む。ウルドゥー語では今でこそほぼ音の通りに
 綴られているが、かつてはヒンディー語同様に綴っていた。
 bheer. @Hindi=「bhe ̄rレ 」    bheyr. @Urdu=「bheyrレ 」     =【ベール】=羊
 気息を伴う音はウルドゥー語では「二眼の h 」を付すことにより表現されるが、これは語中
 でも常に2つの眼を持つ。「反り舌の r 」はデーヴァナーガリーではドット付き、ウルドゥー語
 では「t‘ 」付きの「r」として新設された。
 ilm @Hindi=「ilm」       ‘ilm @Urdu=「‘ilm」       =【イルム】=知識
 これはペルシャ経由で入ってきたアラビア語だが、この場合の「‘」字は単なる母音の置台
 として扱われる。(本当はデーヴァナーガリーの「lm」は結合形を成すが、分かり易さのため
 に無母音記号で示してある)
 duaa @Hindi=「dua ̄」       du‘aa @Urdu=「du‘a┃」    =【ドゥアー】=祈り、祝福
 これもペルシャ経由のアラビア語に由来だが、「‘」字は単に母音連続を避ける区切りとして
 扱われ、この用法での「 ‘」は変音しない。
 baad @Hindi=「ba ̄d」       ba‘d @Urdu=「ba‘d」  =【バードゥ】=after、afterwards
 ペルシャ経由のアラビア語だが、「‘」の後ろは子音であり、母音の台とも母音連続回避
 とも解釈できないので、「a‘」は【アー】と伸びる。
 sheer @Hindi=「s#e ̄r」      shi‘r @Urdu=「s#i‘r」     =【シェール】=詩
 やはりペルシャ経由のアラビア語であり、↑と同様の理由で「i‘」は【エー】音になる。
 デーヴァナーガリーでは音の通りに綴っているが、「虎、獅子」の意の単語と同綴りに
 なってしまっている。
 shoolaa @Hindi=「s#o ̄la ̄」 shu‘lah† @Urdu=「s#u‘lah†」  =【ショーラー】=炎
 これもペルシャ経由のアラビア語で、↑↑同様の理由で「u‘」は【オー】音になる。
 ウルドゥー語末の「-ah」はここでは【アー】音なので「-ah†」で転写するが、ヒンディー語
 では音の通りに綴っている。ウルドゥー語末の「h」字はフォントによっては字形が判別
 しにくいかもしれないが、ドットが下に付くものもある。
 rahnaa @Hindi=「raha。na ̄」 rahnaa @Urdu=「rahna┃」   =【ラェフナー】=remain
 ヒンディー語の「h」字に何の記号も付いていないが、後ろが母音付きなので潜在母音は
 読まない。よって「 aha。 」の形になっているから「ra」は【レ】の方向に変調するが、
 ここでは【ラェ】のようにしてみた。
 meehmaan @Hindi=「me ̄ha。ma ̄n」   mihmaan @Urdu=「mihma┃n」
                       =【メーフマーン/メフマーン】=客、ゲスト
 ウルドゥ語の「ih」では「i 」が【エ】っぽく変調するが、ヒンディー語の方は音の通りに
 綴っている(ただし長音【エー】)。この語は純粋なペルシャ語に由来する。
 shoohrat @Hindi=「s#o ̄ha。rat」   shuhrat @Urdu=「s#uhrat」
                       =【ショーフラトゥ / ショフラトゥ】=名声、評判
 ウルドゥ語の「uh」では「u 」が【オ】っぽく変調するが、ヒンディー語の方は音の通りに
 綴っている(ただし長音【オー】)。この語はペルシャ語経由のアラビア語が起源。
 soolah @Hindi=「so ̄lah」 sowlah @Urdu=「sowlah」
                       =【ソーラェヘ、ソーラ(ー)】=(数字の)16
 語末の「ah」には微妙な問題が存在する。ヒンディー語以前では語末でも潜在母音が
 読まれていた可能性があり、この語もそうなので語末の「ah」は「aha。 」と解釈し【エヘ】
 に変調する。しかし実際には「ah。 」「ah†」、つまり【ァ】または【ァー】で読まれることも
 多いようである。
 sheer-i paN.jaab @Hindi=「s#e ̄r-i pamd#a ̄b」 sheyr-i paN.jaab @Urdu=「s#eyr-i pamd#a┃b」
      =【シェ−レー パンジャーブ / シェ−レ パンジャーブ】=パンジャブの虎
 この語は全てペルシャ語起源の単語からなっており、修飾関係でエザーフェが使われて
 いる。ウルドゥー語のエザーフェは大抵の場合記されず、デーヴァナーガリーでは「e ̄」
 で記すが、やはり「-i 」で転写する。
 taalib-i ilm @Hindi=「ta ̄lib-i ilm」 t‘aalib-i ‘ilm @Urdu=「t‘a┃lib-i ‘ilm」
         =【ターリベー イルム / ターリベ イルム】=知識の探求者、学生
 これは殆ど熟語のように使われているせいか、ウルドゥー語でもエザーフェが「i 」記号
 で記されている。この語は全てペルシャ経由のアラビア語で構成されている。
 (デーヴァナーガリーの「lm」は結合形になるが、簡単のために無母音記号で示してある)
 k‘atraa-i aab @Hindi=「k‘ata。ra ̄-i a ̄b」 k‘atraa-i aab @Urdu=「k‘at‘ rah†-i ┃a ̄b」
            =【カトゥラーエー アーブ / カトゥラーエ アーブ】=水滴
 ウルドゥー語で語末の「-ah」にエザーフェが付く場合は「h」字の肩に「’」が付されるが、
 発音は【エ(ー)】のままで、転写記号も変えない。
 前半「滴、粒」はアラビア語がペルシャを通って入ったものだが、後半「水」は純然たる
 ペルシャ語なので、マッダ記号「┃’a ̄ 」から必要無い「’」を抜いて転写している。
 valii-i laamil @Hindi=「w゛ali ̄-i ka ̄mil」 valiy-i kaamil @Urdu=「w゛aliy-i ka┃mil」
           =【ヴァリーエー カーミル / ヴァリーエ カーミル】=完璧な聖者
 ウルドゥー語で語末の「-iy」にエザーフェが付く場合は「y」の肩に「’」が付されるが、
 やはり発音は【エ(ー)】で、転写記号も「-i 」のままにする。この語は全てペルシャ経由
 のアラビア語である。
 daryaa-i sim.dh @Hindi=「dara。ya ̄-i sim dh」 daryaa-i sim.dh @Urdu=「darya┃-i sim dh
           =【ダルヤーエー スィンドゥ / ダルヤーエ スィンドゥ】=インダス川
 ウルドゥー語で語末の「-a┃」にエザーフェが付く場合は「y†’ 」+「大きい y 」字を付して
 記されるが、転写記号はやはり「-i 」とし【エ(ー)】音になる。
 前半はペルシャ語で「川」または「海」の意。後半はインダス川の意のサンスクリットに由来
 する現地語ではあるが、これが西に伝わってアラビアやペルシャでも「Sind」と呼ぶので
 エザーフェも許されるのだろう。ちなみに「シンド」以東は「ヒンド」と呼ばれる。



お役立ちサイト

 まんどぅーか::ウルドゥー・ヒンディー語 − 入門です
 東外大研修用テキスト::ヒンディー語・文字と発音(PDF) − 他にも文法とか語彙集とか
 東外大::ヒンディー語→日・英 辞書
 UrduWord ウルドゥ語⇔英辞書(英)
 シカゴ大 DDSA 辞書(英) − 南アジア諸言語⇔英
 LEXILOGOS::Devanagari Keyboard Online - Hindi Alphabet(英) − ブラウザ上でヒンディー語を入力
 LEXILOGOS::Urdu Keyboard Online(英) − ブラウザ上でウルドゥ語が入力できる
 Urdu character picker(英) − これもウルドゥ語入力 文字は多いがナスタアリークなので見辛いかも



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