SCOTTISH GAELIC EXPRESSION in THIS SITE
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スコットランド・ゲール語の直接の先祖はアイルランドから渡ってきたスコット族の言語であり、土着のケルト系
民族は次第にそれに吸収されていった。従ってそれはアイルランド語に似通っている。

現代のスコットランド・ゲール語では次のような文字を使用する。

 a b c d e f g h i l m n o p r s t u   a` e` i` o` u`  e´ o´

ただし、通常のラテン文字でここに無いものでも外来語では使うことができる。また文法的な事項に関しては
「-」(ハイフン)及び「’」(アポストロフィ)も使用される。


表記規則はこれで尽きているが、せっかくなので読み方も解説する。


まず「e」と「o」には2種類の読み方がある。

 「e」=【広口のエ】 または 【狭口のエ
 「o」=【広口のオ】 または 【狭口のオ

これらは綴りからは判別できない。しかし長母音では判別できる。「`」は母音を長音化するが、「e」と「o」では
「´」でも長音化できる。

 「a`」「i`」「u`」=【アー】【イー】【ウー】
 「e`」=【広口のエー】  「e´」=【狭口のエー】
 「o`」=【広口のオー】  「o´」=【狭口のオー】

次にスコットランド語では破裂音に濁音は無い(摩擦音の方には濁音はある)。

 「b」=【p】  「p」=【気息を伴う p 】  (両者とも【p】っぽい)
 「d」=【t】  「t」=【気息を伴う t 】  (両者とも【t】っぽい)
 「c」=【k】  「g」=【気息を伴う k 】  (両者とも【k】っぽい)

  ただし「cn」=【kr】 「s(t)r」=【str】

なお、母音直後の「p」「t」「g」は気息を伴うのではなく、母音との間に【h】音を置いて発音されるが、話者によって
は【独語の強いフ 】音になる。これに関連して、アクセントのある音節では「r」と「t」(話者によっては「r」と「d」も)
の間に【シュ】音が挿入されて読まれているようである。

そして「nn」「ll 」「rr」は基本的にはゲール語本来の「緊張した」音であり、「前歯の裏」と「舌」を使う「歯音」になる
が、現在はそれは普通の「n」「l 」「r」と混ざってしまった。

 「n」=語頭で【舌先を歯裏に付けたままの「n」】/語中で【普通の「n」】
  ただし「nn」=常に【舌先を歯裏に付けたままの「n」】
 「ll 」「l 」=【舌先を歯裏に付けたまま 舌脇から出すラ行
 「r」=語頭で【舌先の震えるルラ行 】/語中で【舌先で歯茎を弾くラ行
  ただし「rr」=常に【舌先の震えるルラ行

子音字の後ろに「h」を付すと摩擦音を作ることができる。ただし現在では一部の音は劣化している。

 「ch」=「独語の強いハ行、摩擦のカ行 」 「gh」=「摩擦のガ行 」 ただし母音間では脱落する場合も多い
  (ただし「chd」〜「chk」字の音)
 「th」=【h】    「dh」〜↑「gh」に同じ
 「ph」=【f】    「bh」=【v】
 「fh」=(概ね読まない)
 「sh」=【h】
 「mh」=【v】 ただし母音間では脱落する場合も多い

これは島ケルト語一般で云う所の文法的な子音変異にも用いられる音である。つまり単語の活用時や、前の単語
との兼ね合いで単語の語頭の子音は摩擦音に変化することがあり(摩擦音自体は語中でも現れるが、元は破裂音
だったが周囲の音との兼ね合いで変化したものである)、これと同類の語頭母音の変化において「t-」「h-」「n-」
などのようにハイフンを使った綴りも見るだろうが、字面の通り読めばいいので詳細は省くこととする。ただし「t-」は
語頭の「s」に対しても生じ得るが「t-s」は単なる【t】音であり「s」は読まない。
また、語頭が変異するのでなく、前の単語の末尾が抜け落ちる変化もあり、これが生じた時には「’」(アポストロフィ)
が当該個所に挿入されるが、これも気にせずにそのまま読むだけの話である。

ゲール語では、母音は「広い」ものと「狭い」ものの2種に分かれる、とされる。

 広母音= a o u 及びその長音
 狭母音=   e i 及びその長音

明記はされないが、狭母音の直前・直後の子音群も引きずられて「狭く」変化する。大雑把に言うと子音が「狭くなる」
とは、「硬口蓋化する」「微妙に拗音(小さい「ャ行」付き)っぽい」という現象である。以下「狭くなった子音」で注意
すべき発音を挙げる。

 狭い「p」「b」「f」「m」「ph」「bh」「mh」「th」「sh」
  =【ア/ウ/オ】類の音の前でのみ「ヤ行」を後ろに伴うが一体化・口蓋化はしない
   (つまり「プヤ行(帯気)」「プヤ行」「フヤ行」「ムヤ行」「フヤ行」「ヴヤ行」「フヤ行」「フヤ行」のようになる)
 狭い「gh」「dh」=「独語の摩擦するヤ行
 狭い「fh」=(やはり読まない)
 狭い「cn」「s(t)r」=そのまま変わらない
 狭い「h」=そのまま変わらない

 狭い「l 」=語頭で「舌面のリャ、ジャ行 」/語中で【普通の「l 」】
  ただし、狭い「ll 」=常に「舌面のリャ、ジャ行
  (前置詞「le (=with)」では普通の【l 】で読む)
 狭い「n」=語頭で「ニャ行 」/語中で【普通の「n」】
  ただし、狭い「nn」=常に「ニャ行
 狭い「r」=語頭でそのまま「緊張した r 」/語中では口蓋化して「リャ行」
  ただし、狭い「rr」=概ね口蓋化しない
  (前置詞「ri (=to)」では普通に「リャ行」で読む)

なお、母音と「p」「t」「k」の間に(【h】音では無く)【独語の強いフ 】音を挟む話者では、この音も「狭く」なり
独の強いヒュ 】音になる。

単に後ろの子音群を「狭く」したいがために、母音の後ろに「無音の i、e」を付すことができる。前の子音群を「狭く」
したければ「無音の i、e」を母音の前に付せばよい。さらにまた、単に前後の子音群を「広く」したいがためだけに
「無音の a、o」を前後に付す、といったこともできる。実はスコットランド・ゲール語の正書法では「子音字の前後
の母音は子音を広くするか狭くするか、矛盾無く明示されねばならない」。そうすると二重母音なのか短母音
なのか判別が困難である、といった事態が生じることになる。そこで以下に母音字の読みを記しておくこととする。
(以下では【э】〜【曖昧母音の「ァ」 】、「非母音/非子音」〜「子音/母音または語末」を意味する)

 「a」=【ア】/(アクセント無しで語末「-ag/an」を除き)【э】
     /(「rn/rd/(語末の)rr」の前で)【アー】
     /(「ll/nn/m+非母音」や「bh/mh+子音」の前で「bh/mh」と融合して)【アゥ】
     /(「dh/gh」+非子音の前で)【非円唇のオ
     /(「dh/gh」+子音の前で「dh/gh」と融合して)【非円唇のオー】
 「ai 」=【ア】
     /(アクセント無しで語末「-ail 」を除き)【広口のイ 】 単語によっては【э】や【暗い「ェ」
     /(「rn/rd/(語末の)rr」の前で)【アー】
     /(「ll/nn/m+非母音」または「bh/mh+子音」の前で)【アィ】
     /(「dh+子音」の前で「dh」と融合して)【アィ】
     /(「gh+子音」の前で)【非円唇のオィ】
   (↑いずれも直後の子音群は「狭くなる」↑)
 「a`」=【アー】
 「a`i 」=【アー】/稀に【広口のエー】  (後方の子音群は「狭くなる」)
 「ea`」=【アー】  (「e」は前方の子音群を「狭くする」だけで無音)

 「e」=【狭口のエ】または【広口のエ】/(アクセント無しで)【広口のイ 】  (前後方の子音群は「狭くなる」)
 「ea」=【広口のエ】ただし語頭では【ヤ】となることもある
     /(アクセント無しで)【э】ただし語末の「-eag」では【ア】音
     /(「s/d/g」の前)【狭口のエ
     /(「ll/nn/rr+母音」の前で)【ア】ただし語頭では【ヤ】となることもある
     /(「rr+非母音 / rn(単独)」の前で)【アー】
     /(「ll/nn+非母音」の前で)【アゥ】
     /(「mh+子音」の前で「mh」と融合して)【エゥ】
     /(「dh/gh」+非子音の前で)【非円唇のオ
     /(「gh」+子音の前で「gh」と融合して)【広口のオー】
   (↑いずれも直前の子音群は「狭くなる」↑)
 「ei 」=【狭口のエ】/(アクセント無しで)【広口のイ
     /(「ll/nn/m+非母音」の前で)【狭口のエィ】または稀に【非円唇のオィ】
   (↑いずれも直前・直後の子音群は「狭くなる」↑)
 「eu」=【イァ】稀に【狭口のエー】/(「m」の前で)【狭口のエー】  (直前の子音群は「狭くなる」)
 「e´」=【狭口のエー】  (直前・直後の子音群を「狭くする」)
 =「e´i 」  (「i 」は無音)
 「e`」=【広口のエー】  (直前・直後の子音群を「狭くする」)
 =「e`i 」  (「i 」は無音)
 「e`a」=【イァ】  (直前の子音群を「狭くする」)

 「i 」=【イ】/(アクセント無しで)【広口のイ
     /(「ll/nn/m+非母音」や「bh+子音」の前で)【イー】
   (↑いずれも直前・直後の子音群は「狭くなる」↑)
 「io」=【イ】
     /(「ll/nn+非母音」)【ウー】ただし語頭では【ユー】となることもある
     /(「ll/nn+母音」)【ウ】
     /(「dh/gh+子音」の前で「dh/gh」と融合して)【iэ】
   (↑いずれも直前の子音群は「狭くなる」↑)
 「ia」=【iэ】/(元は「e´i 」だったが所有格になって変異した場合)普通の【イァ】  (直前の子音群は「狭くなる」)
 =「iai 」  (直前・直後の子音群は「狭くなる」)
 「i`」=【イー】  (直前・直後の子音群を「狭くする」)
 「i`o」=【イー】または【iэ】    (直前の子音群を「狭くする」)

 「o」=【広口のオ
     /(「rn/rd/語末のrr」の前で)【広口のオー】
     /(「b/g/m/bh/gh/mh」の前で↓以外の場合)単なる【オ】
     /(「ll/nn/m+非母音」の前で)【広口のオゥ】
     /(「gh+子音」の前で「gh」と融合して)【オー】
 「oi 」=【非円唇のオ 】または【広口のオ
     /(「b/g/m/bh/gh/mh」の前で↓以外の場合)単なる【オ】
     /(「ll/nn/m+非母音」の前で)【非円唇のオィ】
     /(「bh+子音」の前で「bh」と融合して)【эi】
     /(「mh+子音」の前で「mh」と融合して)【広口のオィ】
     /(「gh+子音」の前で「gh」と融合して)【非円唇のオィ】
   (↑いずれも直後の子音群は「狭くなる」↑)
 「eo」=【広口のオ 】  (「e」は直前の子音群を「狭くする」だけで無音)
 「ao」=【非円唇のウー】
 「aoi 」=【非円唇のウー】/(「ll/nn/m+非母音」や「bh/mh」の前で)【非円唇のウィ】
   (↑直後の子音群は「狭くなる」↑)
 「o`」=【広口のオー】
 =「o`i 」  (「i 」は直後の子音群を「狭くする」だけで無音)
 「eo`」=【広口のオー】語頭では【広口のヨー】になることもある  (直前の子音群は「狭くなる」)
 =「eo`i 」  (直前・直後の子音群は「狭くなる」)
 「o´」=普通の【オー】
 =「o´i 」  (「i 」は直後の子音群を「狭くする」だけで無音)

 「u」=【ウ】/(「ll/nn/m+非母音」や「語末のrr/rn」の前で)【ウー】
 「ui 」=【ウ】
     /(「s」や「ll/nn/n/m/ng」の前で↓以外の場合)【非円唇のウ
     /(「ll/nn/m+非母音」や「dh」の前で)【非円唇のウィ】
     /(「mh+子音」の前で「mh」と融合して)【ウィ】
   (↑いずれも直後の子音群は「狭くなる」↑)
 「iu」=【ウ】ただし語頭では【ユ】になることもある/(「rr/rs」の前で)【ウー】  (直前の子音群は「狭くなる」)
 「ua」=【uэ】/(「n/m/ng」の前で)普通の【ウァ】
 =「uai 」  (「i 」は直後の子音群を「狭くする」だけで無音)
 「u`」=【ウー】
 =「u`i 」  (「i 」は直後の子音群を「狭くする」だけで無音)
 「iu`」=【ウー】    (「i 」は直前の子音群を「狭くする」だけで無音)
 =「iu`i 」  (「i 」は直前・直後の子音群を「狭くする」だけで無音)

なお、明記はされないが「lb」「lbh」「lg」「lm」「nm」「rg」「rb」「rbh」「rm」などの子音連続では間に【э】音が挿入
されて読まれている。



付録 お役立ちサイト

 La`rach Akerbeltz(英) − 文法・発音とか音声ファイルとか色々
 Sabhal Mo`r Ostaig::Gaelic on the Web(英・スコット) − ネット上の各種リソース(+自前の資料)のリンク集
  スコット語が多用されてるので全貌はよく分からんが、ケルト語一般も扱っている
  上段中央「Ga`idhlig」がメイン? 「Ga`idhlig air an Li`on(スコット語リンク集)」とか「Faclairean(辞書)」とか
  「comhradh(各ケルト語毎のリンクリスト)」あたりへ行けばいいのか?どうなの?
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