KHMER TRANSCRIPTION in THIS SITE
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現カンボジアの公用語であるクメール語の基礎は強大なアンコール王朝の時代に成立した。その表記に用いられる
クメール文字は東南アジア地域で最も早く作られた文字であるが、元々は仏典の表記のために考案されたもので、
南インド系のグランタ文字を参考にしている。よって本サイトの転写法も古典サンスクリットやパーリ語に準拠するが、
具体的な転写法は、以下で実際に文字を示しながら解説する。

クメール文字の子音字の方は、次の通りになる。(黄字については後で説明する)
 ka=「k(a)」 kha = 「kh(a)」 ga=「g(a)」  gha =「gh(a)」   nga =「ng(a)」
 ca=「t#(a)」 cha=「t#h(a)」 ja=「d#(a)」 jha=「d#h(a)」  n~a =「n#(a)」
 t.a=「tレ(a)」 t.ha=「tレh(a)」 d.a=「dレ(a)」 d.ha =「dレh(a)」 n.a=「nレ(a)」
 ta=「t(a)」  tha=「th(a)」   da=「d(a)」  dha =「dh(a)」   na =「n(a)」
 pa=「p(a)」 pha=「ph(a)」   ba=「b(a)」  bha =「bh(a)」   ma =「m(a)」
        sa=「s(a)」 s.a=「sレ(a)」 s´a =「s#(a)」  ha=「h(a)」
               ra =「r(a)」 la=「 l(a)」 ya=「y(a)」 va=「w゛(a)」
            l.a=「lレ(a)」

ここで(a)と括弧で括ったのは、サンスクリット同様に子音字が元々【a】音を持っていることを示すもので、
別の母音で読ませたければ上下左右に記号を付して示す。ただし母音が無いことを示すには、語末では
 Last C mark= (梵単語末の無母音記号)

を付し、それ以外の場所では単に後続の子音字を下にくっつけて(横にはみ出ることもある)記すだけであり、
これを「足付きの子音」と呼ぶ。しかし本サイトではこれらにわざわざ記号を作って示したりせず、ただ単に
母音を抜いて表記するだけとする(一方ユニコードでは仮想的な無母音記号が定められており、これを併せて
入力すれば自然に足付き文字になる)。そして子音に母音を付したければ、
             i mark=「i 」      u mark =「u」
 long a mark=「a ̄」    long i mark=「i ̄」    long u mark =「u ̄」
   long e mark=「e ̄ 」  long o mark=「o ̄」
   ai mark=「ai 」   au mark=「au」

等を使う。「r( ̄)」「l ( ̄)」がないが、後で説明する( r + で代用する)。
語頭などで用いる母音の独立形は次のようになる。
 ’a=「 a 」    i =「i 」    u=「u」      r。=「r 」   l。=「 l
 ’aA=「a ̄ 」  long i=「 i ̄」  long u=「u ̄」    long r。=「r ̄」  long l。=「 l ̄」
  long e=「e ̄ 」  long o/long o other(古)=「 o ̄」
  ai=「ai 」     au =「au」

その他の記号は、
 h.=「CV h゚」 m.=「CV m」 avagraha=「〆」

これで梵語仏典が転写できることになった。それでこれから現代クメール語の解説に移る。ただし発音は首都プノンペン
で話されるそれに準拠する。


実はクメール語では語頭の母音(つまり独立形の母音字)は常に「’(声門破裂音、母音を力んで発する時に生じる)」
を伴っている。従って独立形の「a」字は「’(a)」なる子音字とも解釈できるが、実際にクメール語ではそうなっているので
 ’a=「’(a)」 または 「 a 」 と臨機応変に書き分ける

とすることとする。すると独立字「a ̄」は形を見れば実は「’+ a ̄」である。というか、音を表すだけなら独立字自体
がいらないのだが、単語ごとに独立字を使うか「’+母音」を使うかは歴史的に決まっているので、当サイトでは
語頭に「’」でなく母音があったらそれは独立字体を使っているものとする。

クメール語には反舌音が無く、濁音もあまり発達していないので、子音字の実際の発音は次のようになる。

                       g(a) 〜【k(@)】   gh(a) 〜【kh(@)】
                       d#(a)〜【t#(@)】   d#h(a)〜【t#h(@)】
 tレ(a)〜【d(a)】  tレh(a)〜【th(a)】   dレ(a)〜【d(@)】   dレh(a)〜【th(@)】 (【d」は実際は殆どの場合入破音になる)
                       d(a) 〜 【t(@)】   dh(a) 〜 【th(@)】
                       b(a) 〜 【p(@)】   bh(a) 〜 【ph(@)】

 nレ(a)〜【n(a)】    lレ(a)〜【l (a)】

ここで【@】=【アとオの中間音】であるが、【a】→【@】変化によって欠落した子音情報が補われていることになる。
さらにまた、

 p(a) 〜【b(a)】 (【b】は実際は殆どの場合入破音になる)

 n(a)〜【n(@)】    l(a)〜【l(@)】

なのだが、すると子音字の中で実際は同じ音だが【a】を伴うものと【@】を伴うものが一対一に対応することになる。
この対応字を相互に変換する記号があり、それは
 A to O mark= 「CV 」(A子音 → @子音)
 O to A mark= 「CV 」(@子音→A子音)

のように転写するものとする(子音の実際の音のみ変化し母音は変わらない)。ただし、母音記号と重なりそうな時
には、いずれの場合とも以下の記号を使う。
 O to A or A to O mark= 「CV 」 または「CV 」と臨機応変に記す

別に一対一対応するわけではないが(従って上の記号も適用できないが)、「@子音」のお仲間は他にも

 ng(a)〜【ng(@)】  n#(a)〜【n#(@)】
 m(a)〜【m(@)】   r(a) 〜 【r(@)】
 y(a) 〜【y(@)】   w゛(a)〜【w゛(@)】
             (後ろの母音によっては「w゛」〜「ワ行」、「y」〜「ジャ行」のように聞こえることもある)

のようなものがある(実は一番上で@子音を黄色字で記しておいた)。「A子音」と「@子音」の後ろでは一般の母音記号
も音が異なるが、それを解説する前に新たに作られた母音字とその転写記号を示しておかねばならない。
 эu other=「iυ」(独立形のみ)
 зmark =「i 」   зз mark =「i ̄」      uUэ mark= 「ω」     aE mark= 「a¶e ̄」
 iE mark= 「ιe ̄」  iIeE mark= 「i ̄e ̄」  щЩE mark =「ι ̄e ̄」

ここで「¶」記号には本来は独自の意味があった。
 implied V mark=「¶」  (梵語などで、子音の内部母音そのままで読む)

そして実は、長母音は次の記号を使うと短母音に変換できる。
 Shorten Vowel mark= 「÷」(短母音化)

すると母音字の実際の発音は以下のようになる。(※暫定版ですので予告なく変更する場合があります)

 
母音記号 a子音の後 @子音の後
a a( ̄) @( ̄)
a ̄ a ̄ i( ̄)э
a
i e i
i ̄ эi i ̄
i э i
i э ̄ i
u o u
u ̄ o ̄(u) u ̄
ω u( ̄)э
i ̄e ̄ a( ̄)э э.. ̄
ι ̄e ̄ i( ̄)э
ιe ̄ i( ̄)э
e ̄ e ̄(i ) e.. ̄
a¶e ̄ a( ̄)e ε.. ̄
ai ai e..i
o ̄ a( ̄)o o.. ̄
au au э..u
(独立形のみ【’эu】)
r (独立形のみ【r i】)
r (独立形のみ【r i ̄】)
l (独立形のみ【l i】)
l (独立形のみ【l i ̄】)
am am um
a ̄m am oэm
um om o..m
ah° ah ε..эh
uh° oh uh
e ̄h° eh e..h
o ̄h° @h u@..h
  【@】=【アとオの中間音
  【ε】=【(広口の)エ】(【e】の方は微妙に【イ】っぽい)
  【э】=【曖昧母音
  【i 】=【(イの口の形で)ウ

  【V..】=V弛喉音/息漏音
    (喉を弛め溜息の如く大きく息を吐く
     【e..】や【ε..】は微妙に【ア】っぽく、
     【o..】は微妙に【ウ】っぽい)

  当然ながら独立字では頭に【’】音を付して
  読まれる (「r( ̄)」「l( ̄)」では無し)

上を参考にすれば、例えば「r」「r ̄」「l」「l ̄」に対応する記号は次のようにも書けることになる。

 r→「r i 」  r ̄→「r i ̄ 」    l→「l i 」  l ̄→「l i ̄ 」

ただし単語中で読みたい母音の前に複数の子音がある場合は対象の母音から遡って最初に当たった子音字が
母音の読みを決定するのだが、半母音・鼻音・流音類(「y」「w゛」「n」「ng」「n#」「nレ」「m」「r」「l 」「lレ」)は素通りする。
そして決定権のある文字が見つからぬ場合はa子音字に関する読みの方を採ることになっている。

なお、クメール語では音節末にある子音は以下のように音が劣化する。

 【kh 】類→【k】  【th 】・【d】類→【t】  【t#h 】類→【t# 】  【ph 】・【b】類→【p】
 【w゛】→【w】   【r】→無音   【s】→【h】

ところでクメール語の単語では例外的な綴りも少なからず存在するのだが、実際には読まない文字があっても、
当サイトではこれも明記する。

 読まない字→「 。 」を付す

次の記号も対象文字が実際には全く読まれないことを示すが、こちらは外来語専用になる。
 No Sound mark= 「 。。 」(黙音記号)

その他に今は読まれぬ記号として
 repha mark= 「я 」(「r 」の名残)
 Stress mark= 「´」(強調アクセントの名残)
 Rising Tone mark= 「∨」(上昇声調の名残)

等があるが、同音異義語の区別には使える。なお、現代語のアクセントは大抵最後の音節にある。

sレ」字と「s#」字は現代語では使われないが、外来語などでは

 hg〜【g】 hv〜【f】 hs〜「シャ行、ジャ行、ザ行」

のような記法が使われている。

なお、Windows XP 以前でクメール文字を扱うにはフォントを自分で用意せねばならない。



付録 お役立ちサイト

 東外大::カンボジア語モジュール − カンボジア語初歩
 イム・キムスール::カンボジア語教科書 − PDF
 SEAsite::カンボジア語 − 北イリノイ大の東南アジア部門 入門 英語
 Cambodian System of Writing ... − クメール文字の入門書 英語
 Khmer Online Dictionary −クメール⇔英 辞書 
 Khmer character picker − ブラウザ上でクメール文字が入力できるスクリプト



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