CLASSIC GREEK EXPRESSION in THIS SITE ⇒Wikipedia ギリシャ人のバルカン半島への侵入は断続的に行われ、従って様々な方言が存在するが、 文学的にはイオニア方言が優勢であった。しかしその一派であるアテーナイ市が台頭して きてからは、特にアッティカ方言が事実上の標準語となっていく。現代人が習得する所謂 「古典ギリシャ語」も普通この方言であって、本サイトでも単に「ギリシャ語」と言えば「古典 アッティカ方言」を指すことになる。 古典ギリシャ語で実際に使われた文字は Α Β Γ Δ Ε Ζ Η Θ Ι Κ Λ Μ Ν Ξ Ο Π Ρ Σ Τ Υ Φ Χ Ψ Ω である。所謂「ディガンマ」、「コッパ」、 「ヘータ」 といった文字は古典期には既に廃れて しまっていた。 母音字「Α」「Ι」「Υ」は長短両方を取りうるので、後世になると補助記号として上に横線 を付すようになったが、本サイトでも次のように書くこととする。 Α=【ア】 Α ̄=【アー】 Ι=【イ】 Ι ̄=【イー】 Υ=【ュ】 Υ ̄=【ュー】 (【ュ】は実際は、「唇の丸いイ 」) 単に対応母音字を並べるとそれは二重母音を示すが、そうでなく単なる2つの母音の並び を示したい時は隔音記号「 ¨」を使う。 ギリシャ語では語頭で且つ母音の前でのみ「h」音が存在し、しかも明記されなかった。 後世になると便宜上アポストロフィを母音の上に追加して有無を示すようになったので、 本サイトでも次のように表す。 ‘=【h】音がある ’=【h】音がない (明記しない事あり) (ギリシャの「h」は恐らく母音前の「s」が劣化したものだが、さらにそれも消失傾向 にあり、語頭の「h」のみ生き残ったと考えられるが、現代では全く残っていない。 従って例えばラテン語「super」と希語「hyper」等は印欧祖語的に同一のものと考えられる。) なお、語頭の「Ρ」は常に強い気息を伴うので、必ず「Ρ‘」で記される。 小文字は中世以降に案出され、古代ギリシャ人は使わなかった。従って当サイトでそれを 使っていれば多分現代ギリシャ語である。(一般には小文字を使っても一向に構わないが、 実はそれを使うと表記規則はかえって煩わしくなる) アッティカ方言の文法が確立されたあとも口語としてのギリシャ語は変化し続ける。 現代ギリシャ語の直接の先祖は口語の「コイネー」であり、これはマケドニアによる ヘレニズム世界の共通語であった。所謂ギリシャ語の聖書も「コイネー」を使っている。 本サイトではこの時期の「コイネー」も「古典語」同様に表記するが、多分支障は無い。 本サイトでの古典ギリシャ語表記規則は以上で終わりである。 しかし一般の便宜のため、発音法を簡単に述べておくことにする。 母音字の読みは以下の通りになる。 Α=【ア】 Α ̄=【アー】 Ι=【イ】 Ι ̄=【イー】 Υ=【ュ】 Υ ̄=【ュー】 Ε=【エ】 Η =【広口のエー】 Ο=【オ】 Ω =【広口のオー】 「Υ」は複母音中では「ウ」のように読まれる。 ΑΥ=【アゥ】 ΕΥ=【エゥ】 ΗΥ=【エーゥ】 ΟΥ=【ウー】(イオニア方言などでは普通に【オゥ】音) (ちなみに語頭の「Υ」は常に【ヒュ】と読まれるので、必ず「‘Υ」で記されることになる) その他の二重母音は普通に読んでよい。 ΑΙ=【アィ】 Α ̄Ι=【アーィ】 ΕΙ=【エィ】 ΗΙ =【エーィ】 ΟΙ=【オィ】 ΩΙ =【オーィ】 ΥΙ=【ユィ】 子音字の読みは以下の通り。 Ρ=【 r 】 Λ=【 l 】(エル) Μ=【 m 】 Ν=【 n 】 Π=【 p 】 Β=【 b 】 Τ=【 t 】 Δ=【 d 】 Κ=【 k 】 Γ=【 g 】 ‘=【h】 ’=(【h】が存在しない) Φ=【気息を伴う p 】(プフのようなプ) Θ=【気息を伴う t 】(トゥフのようなトゥ) Χ=【気息を伴う k 】(クフのようなク) Σ=【 s 】 Ζ=【 zd 】→(前4世紀)→【z】 (従って本来は【ゼウス】神=【ズデウス】) Ξ=【 ks 】 Ψ=【 ps 】 複合子音中で注意すべき発音は、 Γ(元はΝ)はΓ、Κ、Χ、Ξの前(=【k 、g】 の前)で【ング】と発音される ΣはΒ、Γ、Δ、Μの前(=【b、g、d、m】の前)で【z】と発音される なお、このサイトでは使わないが、辞書等を引く時に困るのでアクセントについても軽く触れておく。 ギリシャ語のアクセントは日本語同様に音の高低で区別されるが、基本的に最後から1・2・3番目の 音節のどこにでも現れうる。それは「´」で示されるが、アクセントには3種あるので特に「鋭アクセント」 と呼ぶ。語末にアクセントのある語に別の語が続くと、(一部の例外を除き)これは「重アクセント(`)」 になり高→低で読まれる。長・二重母音などでは1つの音節内で一旦上がってから下がることもある のでこれを「⌒」で書き「曲アクセント」と呼ぶ。曲アクセントと長音記号が重なる時は、長音記号は 省かれる。これらの記号はマケドニア期に考案された物だが、その頃の口語は既に高低から強弱 アクセントに移行しつつあったので色々と支障があったのである。 古典語の話はこれで終わるが、最後に現代ギリシャ語での注意点も少々述べておく。 β=【v】 φ=【f】 χ=【独語の強いハ行】(【ハ】【ヒィ】【フ】【ヒェ】【ホ】) γ=【↑の濁った音】 θ=【英語の澄んだth】 δ=【英語の濁ったth】 π、β、τ、σ、κ、λ、μ、νは二重になっても促音にならない μπ=【mb】だが語頭で【b】 ντ=【nd】だが語頭で【d】 τσ=【ツァ行】 τζ=【ヅァ行】 σは有声子音(λ以外)の前で【 z 】と濁る。 γκ=【ング】+「γ」音、ただし語頭で【 g 】 γγ=【ング】+「γ」音 γχ=【ング】+「γ」音 母音は長短の別が無くなり、幾つかの二重母音も劣化した。 η=【イ】 υ=【イ】 ω=【オ】 αι=【エ】 ι、ει、οι、υι =【イ】だが、非アクセント母音の前で時に【ヤ行】の半母音 ου=【ウ】だが、非アクセント母音の前で時に【ワ行】の半母音 αυ=【 av/af(無声子音の前)】 ευ=【 ev/ef(無声子音の前)】 ηυ=ιυ=【 iv/if(無声子音の前)】 強弱アクセントは「´」で表す。【h】音を表すカンマ等は完全に消えた。 付録 発音の例 「ΗΦΑΙΣΤΟΣ」→『この語では』語頭の長母音「Η」=【エー】の前に【h】音が存在する →(補助記号)→「‘ΗΦΑΙΣΤΟΣ」→便宜上「Φ」=「パ行」でOK→【ヘーパイストス】鍛冶神 「ΑΘΗΝΑ」→『この語では』語頭母音「Α」の前に【h】音は無く、語末の「Α」は長い →(補助記号)→「’ΑΘΗΝΑ ̄」→便宜上「Θ」=「タ行」としてOK→【アテーナー】戦女神 「ΥΠΝΟΣ」→語頭の「Υ」=【ヒュ】に注意→(補助記号)→「‘ΥΠΝΟΣ」→【ヒュプノス】神 「ΡΟΔΟΣ」→語頭の「Ρ」は常に気息を伴うが、便宜上は「ラ行」でOK→(補助記号) →「Ρ‘ΟΔΟΣ」=【ロドス】島(現代の【ロードス】島) 「ΟΥΡΑΝΟΣ」→長母音「ΟΥ」=【ウー】に注意(語頭に【h】音は無い)→(補助記号) →「’ΟΥΡΑΝΟΣ」→【ウーラノス】天空神 「ΕΥ ΑΓΓΕΛΕΙΝ」→二重母音「ΕΥ」=【エゥ】と「ΓΓ」=【ング】に注意(語頭【h】無し) →(補助記号)→「’ΕΥ ΑΓΓΕΛΕΙΝ」→【エゥ・アンゲレイン】=良きお告げ=福音 なお「ΕΥ」=「良い、良く」は小辞(つまり形容詞ではなく何の活用もしない)であり、 「ΑΓΓΕΛΕΙΝ」は「ΑΓΓΕΛΛΩ(告げる)」の不定詞であって「Angel(天使)」に通ずる (ラテン語では「-ein」語尾が存在しないので「EVANGELION」と借用され、これを英語読みすると 【エヴァンゲリオン】になる...とか書いてましたが、ギリシャ語にも「ΕΥ ΑΓΓΕΛΙΟΝ」 って単語がちゃんとあったり...でも大筋で合ってるから勘弁) 「ΝΑΥΣ」→二重母音「ΑΥ」=【アゥ】に注意→【ナゥス】=船 (なお、この語はラテン語で「NA ̄VIS」【ナーウィス】と借用され、これを英語読みすると【ナーヴィス】 となるが、サンスクリットにも「nau」の語があるので実は印欧祖語にまで起源が溯れる ちなみに「ナゥシカァー」の前半はこの語である) 「ΧΙΜΑΙΡΑ」→便宜上「Χ」=「カ行」と呼んで構わない→怪物【キマイラ】 「ΛΕΣΒΟΣ」→「ΣΒ」=【zb】音に注意→【レズボス】島 「ΑΠΟΛΛΩΝ」→子音の連続は促音で読む(語頭に【h】音無し) →「’ΑΠΟΛΛΩΝ」=【アポッローン/アポルローン】太陽神 付録 お役立ちサイト Perseus Project::希・羅検索(英) − ギリシャ・ラテン語文献色々 THEOI Project(英) − 神話関係 ラテン語神名あり ΚΙΠΡΟΣ.NET 辞書(英) − 英⇔希 (古・現)辞書 ギリシャの箱 − 古典ギリシャ語基礎 ta meta ta phonetika − ギリシャ文字初歩 LEXILOGOS::Ancient Greek Keyboard Online − ブラウザ上でユニコードのギリシャ文字を入力できるスクリプト |