ANTIANT EGYPTIAN TRANSCRIPTION in THIS SITE
                                              ⇒Wikipedia

古代エジプトでは所謂「ヒエログリフ」なる表意文字が用いられていた。
これは一つの文字で単語を表すことができるが、アルファベット的な
記法で記すこともできる。ここではそちらの方法について簡単に述べる。

当サイトではアルファベットの各子音字に次のような記号を当てはめて書き記す。

 ’                 H      H‘   ‘      I’

 K   G            Kh Kh#   K‘
 T   D    T#  D#                  N
 P   B             F             M  W

 S   Z    S#                     R

ここで

 ・「’」=声門破裂音      「‘」=有声咽頭摩擦音
   (両者とも日本では便宜上、単なる音の区切りとして扱ってよい)

 ・「I’ 」=「ヤ行」だが、語頭等でしばしば【ア】、さらにまたしばしば「I’ I’」=「ヤ行」

 ・「K‘ 」=「咽頭化したカ行(喉彦のカ行)」  「H‘ 」=「咽頭化したハ行(‘の澄んだ音)」

 ・「Kh 」=「独の強いハ行、摩擦のカ行 」  「Kh# 」=「独の強いヒャ行

 ・「T# 」=「チャ行」       「D# 」=「ヂャ行」

 ・「S# 」=シャ行        「Z」=【z】だが、早い時代(古王国終わり頃)に【s】音に変化

セム・ハム語系にはよくあることだが、ヒエログリフに母音字はない。読み手は文脈から
母音字を判断するのだが、現代では既に発音は失われているので便宜上子音字の間に
【e】を適当に補って発音する。単語が1子音字のみで書かれているならば、その前に【e】
を付してもよい。ただし「’」「‘」は【ァ(ー)】音で読んでしまうことが多く、「I’(I’)」「W」は
あたかも単なる母音が如く【ィ(ー)】【ゥ(ー)】音で読まれる場合も多い。

厳密を期するため、アルファベットの形を具体的に挙げておく。

 ’=「 ’」    ‘=「 ‘ 」
 h =「 H 」     h.  =「 H‘
 k=「 K 」   g =「 G 」  q =「 K‘
  x =「 Kh 」                h_= 「 Kh#
  t =「 T 」  d=「 D 」     t_=「 T# 」  d_=「 D#
   s  =「 S 」  z=「 Z 」      sh=「 S#
   p  = 「 P 」  b =「 B 」
 f=「 F 」
 m=「 M 」  n =「 N 」  r=「 R 」
   y / ’  = 「 I’ 」    w =「W」



付録 (似非)発音法

 N F R〜【ネフェル】=美しい
  ヒエログリフでは母音は表記されないが、不便なので適当に【e】等を補って読むのが習わし。

 ’S T〜【アセト/エセト】=(ギリシャ人呼ぶ処の)ΙΣΙΣ【イシス】女神
  日本では「’」音は単に「母音の置台」または「音の区切り」として機能するものとしてよいが、
  単体で【ア】と読むことが多い。なお、語末の「-T」は女性形を示し、セム・ハム語の性質を
  示している。

 K ’〜【カァ】=霊体
  これを【ケェ】と読む人は殆どいないが、否定はできない。

 ‘ N Kh〜【アンク】=生きる、生きている、生命
  「’」と同様、「‘」も日本では単に「母音の置台」または「音の区切り」として扱ってよいが、
  やはり単体で【ア】と読むことが多い。「N」を【ン】と読んでしまうのは好みの問題だが、勿論
  後ろに母音があるとも限らない。「Kh」は便宜上「カ行」で読んでおいてOK。これを【エネク】と
  読む人はめったにいないが可能性は無きにしも非ずである。

 R ‘〜【レェ/ラァ】=太陽(神)
  この場合は【レェ】と読む人が結構居る。

 Kh W .F -W〜【ク(ゥ)フ(ゥ)】=(ヘーロドトス呼ぶ処の)ΧΕΟΨ【ケオプス】王
  「w」は実際には「ワ行」か複合母音なのであろうが、単なる母音【ゥ】として読んでしまうことが多い。
  ちなみに「KhW」=「守る」、「.F」=「彼が」、「-W」=「WI’(私を)の略」と分解してみれば、これは
  「(神が)我を守り給う」の意であると解釈できる。大抵のセム・ハム語がそうであるようにVSO文型
  が基本だが、新王国時代にはSVOが優勢になる。

 W S I’ R〜【ウシル】=(ギリシャ人呼ぶ処の)ΟΣΙΡΙΣ【オシリス】神
  「I’ 」は実際には「ヤ行」か複合母音なのであろうが、母音【ィ】として読んでしまうことが多い。
  「ニャルラトホテプ」なのか「ナイアルラトホテプ」なのかは現代の我々には分からないのである。
  しかしギリシャ人の発音を見ると、恐らくこの場合は当たらずとも遠からず、なのであろう。

 I’ N P W〜【アンプゥ/インプゥ】
      =(ギリシャ人呼ぶ処の)ΑΝΟΥΒΙΣ【アヌービス】神
  語頭の「I’ 」は【ア】音である場合の多いことがギリシャ人の発音などから分かっている。他にも
  例えば「I’MN」神をギリシャ人は【アムモーン】と呼んでいる。しかし時代とともに語頭の「ヤ行」子音
  は次第に弱化していった、と言う可能性も否定はできないので【イ】音で読んでも非難はできない。
  「I’NBW」なる綴りも見受けられることから鑑みて、新王国時代の頃になると「P」と「B」の区別は
  曖昧になっていたとも考えられる、というか「T」と「D」、「K」と「G」とかもそうらしい。

 D# H‘ W T I’I’〜【ヂェフ(ゥ)ティ(ー)】=(ギリシャ人呼ぶ処の)ΘΩΘ【トート】神
  連続した「I’ 」も大抵は【ィ(ー)】音で読まれてしまう。「H‘ 」は日本では「ハ行」で読んで構わない。
  「DH‘WTI’I’」の綴りもあるので、恐らく新王国期の頃には「D#」は【d】類の音に変化していたの
  だろうが、その頃は「T」と「D」の区別すら曖昧になっていたらしい。

 I’I’ - M - H‘ T P〜【イ(ー)(エ)ムヘテプ/イ(ー)(エ)ムホテプ】
            =(ギリシャ人呼ぶ処の)宰相ΙΜΟΥΤΗΣ【イムーテース】
  「M」は一文字で英「in」相当の前置詞を構成するが、この場合はしばしば【エム】の様にも読まれる。
  「I’I’」=「やって来る」及び「H‘TP」=「満足した、平穏な、休む」であり、よって「平和にやって来る」
  がこの名の意となる。「ヘテプ」か「ホテプ」かは全く個々人の好みにのみ依っているが、古代エジプト語
  を囓っていれば「ニャルラトテップ」等という音訳は出てこないはずである・・・
  ってハナから人間には発音不可能だからいいのか?

 S T Kh#〜【セテヒ】=(ギリシャ人呼ぶ処の)ΣΗΘ【セート】神
  「Kh# 」=「ヒャ行」ではあるが、実は「STKh 」と言う綴り方もあるのでこの場合は【セテク/フ】の様に
  読まれることになる。しかしさらにまた、恐らく最も古い綴り方として「SWTKh 」〜【スゥテク/フ】と
  いうのもある。



付録:お役立ちサイト

 Reading Egyptian Texts_古代エジプト史料館 − 文法入門など
 Thesaurus Linguae Aegyptiae − 辞書とか 画像クリックで入る (英独語混合 登録はでたらめでOK)
 ユニコード関連の技術文書っぽい何か(英・PDF) − エジプト学の標準となっている A.Gardiner の著作とかその他色々
 LEXILOGOS::Egyptian Keyboard online - Transliteration - − ↓エジプト学の転写文字をブラウザ上で入力



注意:エジプト学の通常の転写法では

 「’」→「З」も使われる
 ヤ行の「I’I’ 」→「y」 / 「j 」も使われる
 「H‘ 」→「h.」 / 「 h
 「K# 」→「h
 「Kh 」→「h」も使われる
 「K‘ 」→「k.」 / 「q」
 「S# 」→「s
 「T# 」→「t 」 / 「tj 」
 「D# 」→「d 」 / 「dj 」



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